田名網敬一 記憶の冒険
Keiichi Tanaami: Adventures in Memory
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- 開催終了
- 企画展
現代の越境者 田名網敬一
近年、急速に再評価が進む日本人アーティスト、田名網敬一。武蔵野美術大学在学中にデザイナーとしてキャリアをスタートさせ、1975年には日本版月刊『PLAYBOY』の初代アートディレクターを務めるなど、雑誌や広告を主な舞台に日本のアンダーグラウンドなアートシーンを牽引してきました。その一方で、1960年代よりデザイナーとして培った方法論、技術を駆使し、現在に至るまで絵画、コラージュ、立体作品、アニメーション、実験映像、インスタレーションなど、ジャンルや既存のルールに捉われることなく精力的に制作を続け、美術史の文脈にとって重要な爪痕を残してきました。 本展は、現代的アーティスト像のロールモデルとも呼べる田名網の60年以上にわたる創作活動に、初公開の最新作を含む膨大な作品数で迫る、初の大規模回顧展です。
開催概要
- 会期
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休館日:毎週火曜日
- 開館時間
10:00~18:00
※毎週金・土曜日は20:00まで
※入場は閉館の30分前まで- 会場
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国立新美術館 企画展示室1E
〒106-8558東京都港区六本木7-22-2 - お問合せ
050-5541-8600(ハローダイヤル)
チケット・料金
当日 | 2,000円(一般)、1,400円(大学生)、1,000円(高校生) |
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オンラインチケット |
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- チケット取扱い:
・国立新美術館(当日券:8月7日から販売、開館日のみ)
・オンラインチケット(先行チケット:7月19日10時~8月6日) - 中学生以下は入場無料。
- 障害者手帳をご持参の方(付添の方1名含む)は入場無料。
- 8月19日(月)~25日(日)は高校生無料観覧日(学生証の提示が必要)。※ただし8月20日(火)は休館日
- 学校等の教育活動でのご来館についてはこちらをご覧ください。
- 会期中に当館で開催中の他の企画展および公募展のチケット、またはサントリー美術館および森美術館(あとろ割対象)で開催中の展覧会チケット(半券可)を国立新美術館チケット売場(1E展示室入口)で提示された方は、本展覧会チケットを100円割引でご購入いただけます。
- 国立美術館キャンパスメンバーズ加盟の大学等の学生・教職員は本展覧会を学生1,200円、教職員1,800円でご覧いただけます。国立新美術館チケット売場(1E展示室入口)でお求めください。
- その他の割引などお得な情報はこちらをご覧ください。
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会場での観覧券購入に次のクレジットカードと電子マネー等がご利用いただけます。
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アーティスト
田名網敬一(たなあみ けいいち)
1936 年東京生まれ。武蔵野美術大学卒業。アートディレクター、実験映像及びアニメーション作家、アーティストなど、そのジャンルを横断した類まれな創作活動により、他の追随を許さない地位を築いている。近年の田名網の主要な展覧会として、「パラヴェンティ: 田名網 敬一」(プラダ青山店、東京、2023 年)、「マンハッタン・ユニヴァース」(ヴィーナス・オーヴァー・マンハッタン、ニューヨーク、2022 年)、「世界を映す鏡」(NANZUKA UNDERGROUND、東京、2022 年)、「Keiichi Tanaami」(ルツェルン美術館、スイス、2019 年)、「Keiichi Tanaami」(ジェフリー・ダイチ、ニューヨーク、2019 年)。また、グループ展としてポップアートの大回顧展「インターナショナル・ポップ」(ウォーカー・アート・センター、ダラス美術館、フィラデルフィア美術館、アメリカ、2015-2016 年)、「世界はポップになる」(テート・モダン、ロンドン、2015 年) などがある。パブリックコレクションに、ニューヨーク近代美術館(アメリカ)、ウォーカー・アート・センター(アメリカ)、シカゴ美術館(アメリカ)、M+(香港)、ナショナル・ポートレート・ギャラリー(アメリカ)、ハンブルガー・バーンホフ(ドイツ) など多数。
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展覧会概要
国際的に高い評価を得る日本人アーティスト、田名網敬一(1936‐) の初となる大規模回顧展です。田名網は幼少期に経験した戦争の記憶とその後に触れたアメリカ大衆文化からの影響が色濃く反映された、色彩鮮やかな作品で知られています。本展は当時の資料を含めて田名網が手掛けた膨大な作品を紹介することで、これまで包括的に捉えられることがなかった、その60年以上におよぶ活動を「記憶」というテーマのもとに改めて紐解こうとするものです。
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田名網は武蔵野美術大学デザイン科に入学後、篠原有司男、赤瀬川原平、荒川修作らと出会い、彼らの活動に最前線で触れながら、1957年に日本宣伝美術会主催の日宣美展で特選を受賞します。在学中からデザイナーとして仕事を依頼されるようになり、卒業後は博報堂に入社。2年ほどで退職した後は画廊での展示に固執せず、1966年にはアーティストとしての出発点ともいえる作品集『田名網敬一の肖像』を出版します。アンディ・ウォーホルの美術やデザインといったひとつのメディアに限定しない制作方法に大きな刺激を受け、自らを「イメージディレクター」と名乗るようになります。その後、シルクスクリーンによるポスター(①)、コラージュやアニメーション、イラストレーションや絵画などの作品を精力的に手掛けるようになっていきました(②、③)。
1960年代後半からは音楽や映画、文芸に係る多くの雑誌のエディトリアルデザインを行い、1975年には日本版『PLAYBOY』の初代アートディレクターに就任。この頃、並行して実験映像も制作し、映像作家・松本俊夫と上映会を開催するなど表現の幅を着実に広げていきます。 1980年代は中国への旅行と1981年に経験した約4か月にわたる入院中に見た幻覚をきっかけにして、東洋的な楽園や奇想の迷宮を思わせるようなイメージを描くようになりました(④、⑤、⑥)。1991年には京都造形芸術大学の教授にも就任し、後進の育成にも携わるようになります。
2000年頃からはこれまで田名網自身の作品に現れていた様々なモチーフが再び組み合わされることで、より複雑でダイナミックなイメージが展開されています(⑦、⑧)。田名網にとって作品制作とは過去の記憶を辿っていく作業であり、記憶が自身のなかで無意識のうちに変化していく様子を捉えようとする行為でもあるのです。
88歳となった今も旺盛な創作活動を続ける田名網の存在は、世代や国を超えたアーティスト、そしてデザイナーたちを魅了し続けており、コラボレーションを求める声は後を絶ちません。これは60年以上にわたる活動のなかで、田名網自身が常に自らの表現方法を刷新し続けてきた稀有な感性を持ったアーティストであるからだといえるでしょう。また近年、田名網は海外文化を独自に受容した戦後日本の作家としても世界的に評価が進み、ニューヨーク近代美術館(アメリカ)、ウォーカー・アート・センター(アメリカ)、シカゴ美術館(アメリカ)、M+(香港)、ハンブルガー・バーンホフ(ドイツ)にも作品が所蔵されています。
本展は多方面から注目が集まる田名網が現在まで探究を続けている、虚実が入り混じった記憶のコラージュのような作品世界を存分に体感していただける待望の機会となるでしょう。
見どころ
1 日本の戦後文化史と密接に結びついた作品
アンディ・ウォーホルから影響を受けて制作された日本最初期のポップアートとも呼べる「ORDER MADE!!」シリーズ(1965)(⑨、⑩)や、アメリカの『Avant Garde』誌が主催したベトナム反戦ポスターコンテストに入選した「NO MORE WAR」シリーズ(1967)、テレビ番組『11PM』のために制作されたコラージュの手法を用いたアニメーション、《サヨナラ・マリリン・モンロー》(1971)など、戦後日本で展開されたカウンターカルチャーを物語る作品の数々が出品されます。
2 増幅を続ける「記憶」
近年、田名網は自身の過去の記憶や夢を主題とした作品を数多く制作しています。幼少期に体験した戦争や生死を彷徨った大病の経験を大きなきっかけとし、「人間は自らの記憶を無意識のうちに作り変えながら生きている」という説に基づいて、自身の脳内で増幅される「記憶」を主題に創作活動を続ける田名網。「記憶の冒険」と題された本展では、未発表の新作(⑪)に加え、田名網が70 年代から断続的に記録してきた夢日記やドローイング(⑫)、関連するインスタレーション(⑬)も展示することで、尽きることのないその創造力の源泉に迫ります。
3 変幻自在なコラボレーション
田名網は、その長いキャリアを通して多種多様なクライアントワークやコラボレーションを行ってきました。Mary Quant、adidas(⑭)、JUNYA WATANABE、Ground Yなどのファッションブランドや、GENERATIONS from EXILE TRIBE、八代亜紀、RADWIMPS(⑮)といったミュージシャンと協働する一方で、ウルトラマンなどのキャラクターや生前交流があった赤塚不二夫とコラボレーションした作品(⑯)も制作しています。本展では田名網のデザイナーとしての活動にも焦点を当て、当初からコラボレーションの意識を強く持ち、それによって生じる化学反応から新たな作品を作り出していこうとする田名網の仕事についても紹介します。
作品解説
「NO MORE WAR」シリーズ(1967年)
田名網は学生時代から、作品がより多くの人の目に触れるような発表の形式を模索し、印刷や版画といった複製技術への関心を深めていきました。アメリカンコミックやポップアートの影響も受けつつ、60年代中頃からシルクスクリーンを用いた作品を制作し始めます。本シリーズもその一つで、アートとカウンターカルチャーを扱うアメリカの雑誌『Avant Garde』が1968年に主催した反戦ポスターのコンテストに出品され、優秀作に選ばれました。網点による背景、写真の流用、漫画を意識した構成に、この時期から作家の興味が印刷による複製にあることが明確に表れています。同時にこれらの特徴は、デザイナーとしてのレイアウトや色使いの技術に裏打ちされています。
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《Good-by Marilyn》(1971年)
田名網は幼少期から映像への関心を持ち続けており、60年代中頃にアニメーション制作を始めました。70 年代初頭にはテレビ番組から依頼を受け、いくつかのアニメーションを制作します。その一つである本作では、ホットドックやバナナとマリリン・モンローが反復的に登場し、エロティックな光景が4分半にわたって繰り広げられます。自由の女神、ディズニーといったイメージやポルノグラフィの切り抜きも随所に散りばめられ、アメリカ大衆文化の独自な解釈が表現されています。ただタイトルにも暗示されているように、この時期を境に田名網は徐々にアメリカのシンボルから離れ、作品の主題を自身の記憶へと変化させていきます。本作はその過渡期に作られた作品といえます。
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「常磐松」シリーズ(1986-87年)
田名網は1981年に結核と診断され、4か月近く入院することになりました。生死をさまようなかで、夜ごとに薬の強い副作用で幻覚にうなされる日々を過ごします。幻覚にはサルバドール・ダリの絵画《ポルト・リガトの聖母》などが連日登場し、さらに病院の庭にあった松の木がぐにゃぐにゃと曲がって見えたといいます。この時のイメージを記録したノートは10冊以上にわたり、入院中の幻覚体験は田名網を新たな創作へと向かわせることとなります。1980年に中国を訪れていたことからアジア文化への回帰も加わり、松の木と人工的な都市のイメージが組み合わされることで、80年代には未知なる精神世界を表す楽園や迷宮を思わせる奇想的な世界が描かれるようになります。
《死と再生のドラマ》(2019年)
極彩色で彩られた本作は、戦争を経験した田名網の幼少期の記憶と強く結びついたモチーフの数々から構成されています。田名網にとって「死」は切り離せない主題であり、創作のエネルギーでもあり続けてきました。本作では多数の戦闘機が海に沈みながら妖怪のような生き物が中空を漂い、輪廻転生を思わせる混沌とした世界が繰り広げられています。また、制作手法において田名網は2000年代以降デジタルでデータを起こすようになり、他のメディアへもイメージを無限に増幅させることが可能となりました。映像作品や立体までへも軽々とイメージを展開させていく様は、田名網の多様なアーティストとしての側面を昨今ますます強調しているといえるでしょう。
「ピカソ母子像の悦楽」シリーズ(2020年ー)
コロナ禍は田名網の作品制作にも変化を及ぼしました。予定されていた展覧会などのスケジュールが変更となり、田名網は空白の時間を埋めるようにして以前から好んでいたピカソの絵画「母子像」を模写することを始めます。当初は10枚程度のみ描くつもりでしたが、次第に数が増え、現在までに約500 点以上が制作されています。制約がある方が自身の創造力を発展させられると語る田名網はピカソの母子像をフォーマットに様々なモチーフを組み合わせることで、このシリーズを通して自らのストーリーを展開させていきます。田名網にとって本シリーズの制作は写経に近い感覚を与えるもので、生活のルーティーンとして現在も続けられています。
《綺想体》(2019年)
本立体作品では複数の顔が積み重ねられており、それぞれの力強い眼差しがこちらを見つめてきます。ドクロやクモ、ニワトリ、金魚、うねる松の木などが複雑に組み合わされて一体化することで、まるで一つの命を持っている生き物かのように感じられます。田名網は作品に頻繁に現れる奇妙な姿形の生き物たちのことを、戦争で傷ついた人々であり、恐れることを知らない私たち自身だと語ります。2000年代からは千手観音などの仏像に着想を得た立体作品を制作しており、「自在に変容する脅威の尊像に興味が尽きない 」と語っています。本作は異形の仏像のようでもあり、田名網が考える極楽浄土の世界の生き物が表されています。
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展覧会カタログ
主催、協賛、協力、後援
主催
国立新美術館、朝日新聞社、独立行政法人日本芸術文化振興会、文化庁
協賛
集英社、adidas、MATTEL CREATIONS™
制作協力
ソニー・ミュージックエンタテインメント
協力
NANZUKA
後援
J-WAVE
movie
シンポジウム:田名網敬一の現在地「田名網敬一 記憶の冒険」開幕記念
The Memory about Keiichi Tanaami
関連図書
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