ピカソと並んで20世紀初頭のヨーロッパ絵画を代表する画家マチスは、しばしば「色彩の魔術師」と例えられるとおり、鮮やかな色彩を伸びやかな形で画面に躍らせ、私たちの眼を楽しませてくれます。
今回展示される《ジャズ》20点は、サーカスの場面を描いたものを中心に、各作品とも華やかな活気に満ちあふれており、そこにはジャズの即興演奏にも通じる「いきいきとした激しい響きのイメージ」の世界が展開されています。
《ジャズ》の制作は1943年から始められましたが、70歳を越したマチスはその頃体調をくずしてベッド上での生活を送っており、油彩画に取り組むのは困難な状況でした。そうした状況の下、マチスは絵筆をハサミに持ち替え、以前より試みていた「切り紙絵」に本格的に取り組みます。
切り紙絵についてマチスは「はさみを使ってデザインする」と言い表しているように、彼にとって切り紙絵とは、油彩画に劣らない、色と形のハーモニーを追求するための有効な方法でした。
《ジャズ》は切り紙絵20点にそれぞれマチス自身の伸びやかな筆跡による文章が添えられ、ステンシル版画の挿絵本として出版社テリアードから1947年に限定250部+非売品20部で出版されました。展示では各作品に添えられた文章もあわせてお楽しみください。