クールベは、19世紀半ばパリ画壇に登場し、歴史画重視の古典主義やロマン主義が主流であった当時にあって、現実をありのままに描写し把握することを制作テーマに掲げ、様々な非難を浴びながらも実存感溢れる作品を発表し続けました。
また、広がる自由思想を背景に、政治的活動にも関与したクールベは、パリ・コミューンの先導者として投獄され、財産を没収され、獄中で病に陥るなど精神的・身体的にも追い詰められ、苦しい状況下にも置かれました。しかし、刑期を終えて帰郷したオルナン、さらにはその後の亡命先でもあるスイスで、写実主義の旗頭として、数多くの作品を描き続けました。
その視覚を重視した客観描写は、近代絵画史に新たな息吹を与え、やがて現れる印象派の画家たちに多大な影響を与えました。
本展は、クールベの初期から晩年にかけての風景画を中心に、人物画さらには同時代の画家との共同制作作品、クールベを敬愛した画家たちの作品、また、関係資料を加え、写実主義の巨匠クールベの画業の全貌を紹介します。