この度小山登美夫ギャラリー六本木では、長井朋子展「単管パイプと花柄のパターン、ねこのシールに貝殻のネックレス」を開催いたします。本展は作家にとって当ギャラリーにおける6年ぶり6回目の個展となり、新しい展開を見せる新作ペインティングを発表いたします。
【長井朋子と作品に関して
―幼い頃の記憶、日常の瞬間、夢の景色を色彩のパズルのように共鳴させる】
庭、植物、季節、空気の匂い、光、宇宙、動物、ぬいぐるみ、子供、部屋、、
長井作品のモチーフは、彼女がいつも頭の中にストックしている、小さい頃から親しんだもの、日常のドラマチックな瞬間、夢の景色などです。それらを独自の視点とイマジネーションで有機的につなぎ、色彩のパズルのように共鳴させ、「未知の居心地がいい場所、見てみたい光景」として、森羅万象が輝く新しく自由な絵画空間に私たちをいざなってくれます。
油絵具、水彩、インク、色鉛筆など、さまざまな素材で幾重にも重なるマチエールや直感的な筆致をあらわし、表現方法を限定せず、ペインティング、ドローイング、立体、着ぐるみと多岐にわたるのも特徴の一つです。
四角、円形、多角形、時に5m超の大きさや、手のひらに乗る小さい作品などあり、その多彩さは世界をズームや広角の自由自在な視野でとらえ、創作行為自体を楽しむ彼女の姿勢が現れているようです。
その世界観は国内外に多くのファンを持ち、作品は東京都現代美術館、愛知県美術館、アムステルダム国立美術館などに収蔵。
その他NHK Eテレ番組「時々迷々」「もやモ屋」のアートワークや『丘の上の賢人 旅屋おかえり』(原田マハ著、集英社文庫、2021年)など小説の装画、今年2024年7月に茨城県霞ヶ浦にオープンした「霞ケ浦 どうぶつとみんなのいえ」(建築設計:高橋一平建築事務所)のメインビジュアルを手がけるなど、展示空間を抜け出し公共空間でも多数活躍しています。
また9月15日[日]-10月27日[日]、G foundation tokyoにて個展「長井朋子・休日のドローイング」を開催、初日の17時~はトークセッションが行われる予定です。
(その他の作家情報はこちらをご覧ください:http://tomiokoyamagallery.com/artists/tomoko_nagai/)
【本展および新作について
―花柄のパターンのような抽象性と、絵具の物質感による新しい挑戦】
本展に際し、長井は次のように述べています。
呪文のような展覧会タイトルにしました。
ひとつひとつは、絵のどこかしらに描かれたモチーフです。
今回の作品達のいくつかは、どこか抽象的なことを描くよう意識しています。描いていくうちに自分の中での抽象とは、花柄のパターンのような、色々なハギレが集まっていくような感じだと思いました。
もともとのスタイルも色々なモチーフをパッチワークの用に繋ぎあわせて行くことと近いような気がします。様々なパターンのハギレ(モチーフ)を1枚に繋ぎ合わせいくと、それまで別々だったハギレ達が一体化して画面上でオーケストラをしているかのように見えてきます。
新しい方法として、ナイフで絵の具を盛りっと置くようにして画面上に散りばめました。その絵の具のリズムも楽しくて、ひとつひとつを在るべきところに置いています。
具体的なモチーフから、細かく分解された絵の具のかたまりや粒子を重ねて深みを出してます。そのあたりもみてもらえたら嬉しいです。
「単管パイプ上の世界」は、長井が何故か惹かれる単管パイプと、その上にある「世界の図書室」を描いた作品です。画面に主役的な箇所はなく、模様のような全体像の絵という新しい実験的試みが込められており「自分だけが知ってるパズルをしている」ように描かれました。
「しだれざくら」は毎年描いているしだれざくらのシリーズで、女の子と馬がまわりの桜と同化し、今までで一番抽象的な表現となっています。ナイフで絵の具を盛り乗せ、粒子を何層にも重ね、絵具による物質感も魅力です。
また、新作のエディション作品「毛むくじゃらちゃん」(制作:HOW2WORK、香港、80エディション)も本展にあわせ発表、展示販売いたします。
長井は、世の中にある言葉で表しきれない光り輝く存在を愛しい視点でとらえ、アートでの表現の可能性を追求し続けています。絵画、立体作品ならではの煌めく魅力に溢れる、最新の長井の世界観をご覧にぜひお越しください。