江戸時代前期(17世紀初頭)、肥前有田(現在の佐賀県西松浦郡有田町)を中心とした地域で日本最初の磁器が生産されました。この肥前磁器は、近郊の伊万里港より船で積み出されたことから「伊万里焼」と呼ばれることとなります。特に、江戸時代につくられたものはいまも幅広く愛好され〈古伊万里〉と呼ばれています。
17世紀中頃には、中国磁器に代わるものとして、主にヨーロッパに向けた伊万里焼の輸出が本格化し、意匠や技術が洗練されていく中、1690年代には国内外に〈古伊万里〉のブランドを決定づけた豪華
絢爛な古伊万里金襴手様式が現れます。
18世紀半ばには、海外輸出も終焉を迎え、国内市場に目を向けた〈古伊万里〉は、大名や豪商といった富裕層にとどまらず、同時代の町人や庶民の生活の中にある多様な好みや変化を敏感に捉えなが
ら、時代の流行(モダン)を追い求め、その姿を変えていきます。
さらに、明治維新を経て、西洋文化を積極的に導入し、近代国家へ生まれ変わろうとする動きの中で、磁器生産についても、文明開化の象徴とも言えるガス灯が描かれ、新しい顔料による彩色が施されるなど、西欧近代(モダン)の新しい素材や技術が取り入れられました。
本展覧会では、時代の変化を敏感に捉え、モダンに生まれ変わっていく〈古伊万里〉を中心に、明治以降の伊万里焼も含めた約100件の作品で、その魅力に迫ります。