抽象彫刻の先駆者コンスタンティン・ブランクーシ(1876-1957、ルーマニア出身)は以下のような言葉を残しています。
あなたが魚を眺めるとき、あなたはそのウロコに注意はしない。そうではないでしょうか。あなたは水面下のその動き、その遊泳、その肉体のきらめきを考える…そうです。私が表現したいと思うのはこれなのです。もし私がそのヒレ、目玉、ウロコを再現するとすれば、私は動きを殺してしまい、現実のパターン、あるいはその外観を得たことにしかなりません。私がとらえたいのはその精神のきらめきなのです。
出典:エリック・シェインズ 著、中原祐介・水沢勉 訳『モダン・マスターズ・シリーズ コンスタンチン・ブランクーシ』(1991年、美術出版社)
ここでいう「精神のきらめき」とは、対象となる人やモノの見かけではなく、その内面や本質を指していると解釈できます。表現対象とじっくり向き合い、そこに潜む「精神のきらめき」をつぶさに捉えること―それこそが創作行為の根幹なのであると。
本展では、この「精神のきらめき」をキーワードとして、きらりと光る精神性が見いだせる作品を集めました。言葉の生みの親ブランクーシを筆頭に、ロダンやブールデルなど具象彫刻の巨匠、当館コレクションの特徴でもあるベルギー美術の作家に国内・郷土作家も交え、バラエティに富んだ絵画・彫刻の作品群を4つのセクションでご紹介します。