静岡県清水市(現・静岡市清水区)出身の平野富山(ひらのふざん)(1911-1989)は、日本近代彫刻史上、重要な彩色木彫家の一人です。人形師のもとで学んだ確かな彫技と彩色技術により、伝統的な主題から今日的な女性像まで、まさに超絶技巧とも言うべき作品を生み出しました。また富山は西洋彫刻も習得し、日展を中心に活躍します。さらには木彫界の巨匠・平櫛田中(ひらくしでんちゅう)に信頼され、数多くの田中作品の彩色を手がけます。本展は日本近代における人形、彩色木彫、西洋彫刻の三つの領域を横断し、彩色の専門家としても作家を支えた平野富山の仕事の全容に迫る初の試みです。