「自然」とは、本来「あるがままの様子」を指す中国語に由来する言葉ですが、動植物や地球環境など、人為の加わらない万物をあらわす意味としても使われます。古くから芸術家たちは、そうした「外界」としての自然から様々なインスピレーションを得てきましたが、自然をどのような目線でとらえるかという点では、時代や文化による違いがみられます。たとえば、中世以降のキリスト教世界では、人間は自然を模倣し、支配するものとされてきました。いっぽう古代ギリシアや中国などでは、人間も自然界の一部である、と考えられてきたのです。
今回の常設展では、そうした「人間と自然の関係」をテーマに、主に現代の日本人作家の作品を鑑賞してみたいと思います。植物の生命を抽象化した形、人為の及ばない圧倒的な力をあらわした、力強い筆致、あるいは、自然界との交感によって生み出されたかのような、手と精神の痕跡など、彼らがどのように自然を認識し、表現をつくりだしてきたのかに着目してみましょう。