1980年代から絵画の可能性についてさまざまな試みを追求している山部泰司。作品は東西美術の様式や描法を制作に落とし込みながら変容を続け、近年では、現実の風景と自然を題材にした東洋画の一ジャンルである山水画を考察した風景画を数多く発表しています。
今回、華鴒大塚美術館で開催する山部泰司展では、美術における魅力的なモチーフ、素材となる「自然」「輝き」に着目し、山部の制作の起点となる1980年代後半に取り組んだ「花」のシリーズ、続く2000年代前半の「GOLD PAINTING」シリーズをご紹介します。いずれの作品も当時のアートシーンで大きく注目され、今なお新鮮なエネルギーに満ちています。
瞬間の象徴としての「花」と、永遠の象徴である「GOLD(黄金)」に重なる日常と非日常。このふたつの異なる時間に交差する視覚と感覚が、作品のイメージを静かに提示し、モノの在り方や見方を深めます。
今夏、山部作品を通して豊かな鑑賞の時間を多くの人と共有したいと思います。