本展では、白髪一雄(1924-2008)の版画作品を中心に展示します。床に広げたキャンバスに大量の絵の具の塊を置き、縦横無尽に足で描く独自の技法「フット・ペインティング」で知られる白髪ですが、今回ご紹介する版画は、こうした作品とはまた異なる魅力を放っています。筆や刷毛等を用いて描かれた原画をもとに制作された版画からは、墨画に親しむこともあった白髪の、躍動感あふれる筆遣いを感じることができます。平成3年度に白髪一雄自身から尼崎市へ寄贈された作品「白髪一雄 版画集 1990」(7点組)や、令和4年度に個人等から寄贈され、新収蔵品となった「白髪一雄 版画集 1993」(3点組)など、色鮮やかな版画の世界をご覧ください。
“──版画の制作にあたり、私は最初どうしてよいのかわからず、手のつけようも無い状態であった。だが或る日突然、いつもの油絵制作方法をそのまま活かせばよいのだと気付いた。私の作画法はオートマチズムである。だから何も考えないで無心になって、どんどん描いておかまいなしに、どんどん刷り重ねて貰えばよい。そこには勝手に面白い形や色調が出来るであろう──”
「白髪一雄 版画集 1990」より一部抜粋