様々な色で陶磁器に文様を描き、彩る技法は、中国で五彩(ごさい)、日本では色絵と呼ばれます。これらの技法は陶磁器の表面に釉薬を施して焼成し、さらにその上に上絵具(うわえぐ)をのせて装飾する釉上彩(ゆうじょうさい)で、日本では赤絵とも呼ばれます。色釉を陶磁器の素地に直接のせる技術には法花(ほうか)や三彩(さんさい)があり、これらには赤色が用いられませんが、五彩は赤や黄、緑、紫、青、黒などの多彩な色が用いられて、華やかな花鳥文や人物文などがあらわされました。釉上彩の技法は、中国では磁州窯(じしゅうよう)系の窯で焼造された宋赤絵や磁器の開発などの段階を経て展開されました。多色により絵画のように文様を細密に描写することを可能にし、陶磁器の歴史に新たな扉を開いたといえるでしょう。
日本では江戸時代初めに磁器の焼造と上絵付けが行われるようになります。京都の京焼や肥前(ひぜん)地方の伊万里(いまり)焼などでは、陶器や磁器に色絵が施されて、特色あるやきものが作られました。
この展覧会では、大和文華館の所蔵作品から中国と日本を中心に、欧州のオランダのデルフトやドイツのマイセンも含めて展示し、陶磁器が辿り着いた華やかな色彩の世界をみていきます。(担当 瀧朝子)