退院して東村(現みどり市東町)へ帰った星野富弘は、故郷の春をこう語っています。
「長かった病院生活の後に迎えたふるさとの春は格別である。縁側に陽があたり、洗たく物がやさしくゆれる下で、ねこが柱をひっかいている。時間をかけてゆっくりと自然にとけこみ、ついに平凡という極みにまで達した美しさが、毎日惜しげもなく目の前を通り過ぎていく――」(『風の旅』「帰郷」)
山間を通り抜ける風があたたかくなると、ひっそりとしていた山々は一斉に芽吹き、花を咲かせます。足元にはフキノトウやフクジュソウ、たんぽぽ、すみれ、目を上げると梅や桜が咲き、鳥たちはさえずり、春の訪れを伝えます。光をうけて輝く花たち、風にゆれる野の草たち。星野の春の作品は、湧き上がる喜びをよりいっそう感じさせます。
本展では、春の代表作品や近作を含む約80点を展示しています。ぜひ、ご覧ください。