タイトル等
ちひろの願い 世界中のこどもみんなに 平和と しあわせを
会場
安曇野ちひろ美術館
会期
2023-03-01~2023-05-28
概要
ちひろは青春時代を戦時下で過ごし、戦後は画家としてひとりの母親として、平和への願いを絵筆に託して子どもを描き続けました。空襲のなかを逃げまどった体験を持つちひろにとって、戦争はけっして許されるものではありませんでした。愛情に包まれた子どもの絵も、戦火にさらされた子どもの絵にも、彼女のことば「世界中のこどもみんなに 平和と しあわせを」という願いが込められています。ウクライナでの戦争の終わりが見えず、国際的にも軍拡の動きが進む今の時代にあって、ちひろの絵はいっそう強く、平和の尊さを訴えかけてきます。

いのちのかがやき―春の光のなかで
「平和で、豊かで、美しく、可愛いものがほんとうに好きで、そういうものをこわしていこうとする力に限りない憤りを感じます。」と語ったちひろ。ウクライナの破壊された光景が連日報道されるなか、なにげない平和な日常のなかにこそ、なににも代えがたい豊かさや美しさがあることに改めて気づかされます。

「春の花と子どもたち」(図1)では、前景に大きく配したチューリップやガーベラの花や蝶と、楽しげに遊ぶ子どもたちとが呼応するようです。春の子どもの情景を描いた絵には、子どもと色とりどりの花とを組み合わせたものも多く、色彩豊かな画面は、いのちのかがやきに満ちています(図2)。

ベトナム戦争と反戦運動とちひろ
1960年代前半から75年まで約15年にわたるベトナム戦争では、アメリカ軍の無差別攻撃や枯葉剤の散布によって、民間人も含めて150万人もの犠牲者が出たといわれています。当時、米軍占領下にあった沖縄だけでなく日本にあるすべての米軍基地は、兵器や物資を補給する重要な後方基地の役割を果たし、日本経済は「ベトナム特需」によって潤います。
一方、ベトナム戦争の激化にともない、国内でも反戦運動が高まるなか、1967年、児童文学者のいぬいとみこや今江祥智、古田足日、絵本作家の田島征三らが、「ベトナムの子供を支援する会」を発足します。同年11月にはイラストレーターや漫画家、絵本画家たちの協力を得て、銀座の数寄屋橋で第1回反戦野外展を開催し、70年からは毎月1回行われました。出展を依頼された画家やイラストレーターのもとにはB全判のパネルが届けられ、ちひろも1970年に「ベトナムのこどもわたしたちの日本のこども 世界中のこどもみんなに 平和と しあわせを」ということばを添えて、パステルの作品に仕上げています(図3)。

反戦の思いを込めた3冊の絵本
ちひろは1967年、広島で被爆した子どもたちの詩や手記に絵をつけた『わたしがちいさかったときに』を制作します。原爆の惨禍を風化させず、反戦運動に参加する若い世代に戦争がもたらすものを知ってもらいたいと考えたのでしょう。取材旅行で広島を訪れたちひろでしたが、この地で亡くなった人びとを思い、一睡もできませんでした。「どんなに可愛い子どもたちがその場におかれていたかを伝えること」に心を砕いたちひろは、負傷した体や惨状を具体的に描写するのではなく、原爆が落ちた日の、また被爆後に広島に生きた子どもや家族の深い悲しみを鉛筆と薄墨で描きました。

「防空ずきんにくるまるあかちゃん」(図4)は、原爆から8日後に生後7ヵ月で亡くなった妹を偲ぶ少女の手記に添えられたものです。つぶらな瞳が、失われたいのちへの思いを伝えています。
その後、ちひろはベトナム戦争をテーマに、1972年に『母さんはおるす』、翌1973年には『戦火のなかの子どもたち』(図5)と2冊の絵本を続けて発表します。体調はすぐれず、入退院を繰り返しながらも、「私のできる唯一のやり方だから」と1年半をかけて『戦火のなかの子どもたち』の制作に取り組み、50点におよぶ連作を描き上げました。自らの空襲の体験も重ね合わせながら、戦場で心を深く傷つけられた子どもたちの姿を描いた作品群は、最終的に19点の絵と詩のような短いことばで構成されました。『戦火のなかの子どもたち』が完成したのは1973年9月、刊行から1年にもみたない翌年8月、ちひろはベトナム戦争の終結をみないまま55歳の生涯を閉じます。

本展ではこれら3冊の絵本原画のほか、子どもの遊びの情景やあかちゃんを描いた作品などを展示し、ちひろの平和への願いを見つめます。あわせて、自伝的絵本『わたしのえほん』や息子をモデルにしたスケッチや作品なども紹介、ちひろの人生や時代背景にも焦点をあてます。
ホームページ
https://chihiro.jp/azumino/exhibitions/72223/
会場住所
〒399-8501
長野県北安曇郡松川村西原3358-24
交通案内
[電車によるアクセス]

■安曇野ちひろ美術館の最寄り駅
●JR大糸線 信濃松川駅
信濃松川駅から 安曇野ちひろ美術館まで 約2.5km
・タクシー 約5分
・レンタサイクル 約15分
・徒歩 約30分
※ レンタサイクルは、信濃松川駅前で借りることができます。お問い合わせ先:セピア安曇野・松川村観光協会 TEL. 0261-62-6930

●JR大糸線 穂高駅
穂高駅より あづみ野周遊バス利用 約20分
※ あづみ野周遊バス
穂高駅を中心とした安曇野の観光地を巡る周遊バスです (運行区間内は乗り降り自由)。
4月下旬から11月上旬まで土日祝のみ運行。 (ただし、GW・7月下旬~9月上旬は平日も運行)

●JR大糸線 信濃大町駅
信濃大町駅より 信濃大町周遊バス「ぐるりん号」利用 約35分
※ 信濃大町周遊バス「ぐるりん号」
7月上旬から11月上旬までの土日祝のみ運行。 (ただし、7月下旬~9月上旬は平日も運行)

■長野市からのアクセス
長野駅から JR篠ノ井線にて 松本駅 へ
松本駅で JR大糸線に乗り換え 信濃松川駅 もしくは 穂高駅 下車

長野駅から 松本駅を経由し、南小谷駅へ行くリゾート列車も利用できます。(1日1往復)

<補足>
長野市からは大町への高速バスもございます。
※ このバスをご利用の場合は、信濃大町駅バス停にて下車、JR大糸線に乗り換え 信濃松川駅 まで電車をご利用ください。
また、7月上旬から11月上旬まで 大町周遊バス「ぐるりん号」が運行しております。安曇野ちひろ美術館を通るコースもございますので、ご利用ください。

■松本市からのアクセス
JR大糸線にて 信濃松川駅 もしくは 穂高駅 下車

[飛行機(信州まつもと空港)からのアクセス]
信州まつもと空港から、安曇野市(穂高駅前)・池田町(道の駅池田)・松川村(すずむし荘)・大町市(大町温泉郷)・白馬村(神城駅、白馬八方バスターミナル)・小谷村(栂池高原)を往復するシャトルバスが運行しております。
・安曇野ちひろ美術館最寄の停車バス停 : 松川村(すずむし荘) 下車 徒歩 5分程度

[都心から高速バスによるアクセス]
東京 新宿駅西口バスターミナル から白馬方面へ高速バスが運行しております。
・安曇野ちひろ美術館最寄の停車バス停 : 安曇野松川 下車 タクシー 約8分

[車によるアクセス]

長野自動車道「安曇野」I.C.より 大町・白馬方面へ 約30分
※駐車台数 200台(第1・2駐車場合計) 大型バス 8台(第1駐車場)
※第1駐車場から美術館までは約徒歩2分です(一部段差あり)。 お体の不自由な方は、身障者用駐車場もございますので、事前にご連絡ください。(TEL:0261-62-0772)

※2012年10月7日より 豊科ICは 安曇野ICへ名称変更いたしました
ホームページ
https://www.chihiro.jp/
会場問合せ先
テレフォンガイド:0261-62-0777
長野県北安曇郡松川村西原3358-24
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