私が常々山形で学ぶ若きアーティストたちに感心しているのは、世界や東京との絶妙な距離の取り方です。世のざわめきにも一喜一憂せず、世界の歪みに動じず、恵まれた大自然と程よいサイズの市街地を行き来しながら、等身大で素直な表現活動に勤しんでいるように見えます。ここに選抜された作家たちは、今後のリアル&デジタルの新しい世界がどれほどに混乱しようとも、誠実に自分の目と心で感じ取るメソッドを身につけた、いわば体幹が鍛えられた表現者たちとも言えるでしょう。彼らの揺らがない目線や、物おじしない姿勢には、我々大学側も鍛えられているほどです。そんな稀有なアーティストたちの作品を、一人でも多くの東京のみなさまにご覧いただければ幸いです。(学長 中山ダイスケ)
美術科7コース(日本画、洋画、版画、彫刻、工芸、テキスタイル、総合美術)並びに大学院(絵画、工芸、彫刻、複合芸術)から選抜された卒業・修了制作展を2年ぶりに開催いたします。ようやく東京でも開催できることの喜びは、制作のモチベーションとなりました。東北の雄大な自然や風土に惹かれ、沖縄から北海道まで全国から集った学生たちの作品は、独特の雰囲気を纏った情熱とダイナミズムがあります。今年の学生たちは、2020年から生活や学びの制限を受けながらも懸命に自己を高め、魅力的な表現を展開するまでに成長しました。世界で起こる衝撃とコロナ禍は、価値の多様化を強め、掴みきれない不鮮明な景色へと社会を変化させています。そんな時代に新たなページを記す若いアーティストたちの創造は、私たちの本質に等身大のリアルを響かせてくれるはずです。東北・山形を心に浸透させた志を感じてください。
(美術科学科長 青山ひろゆき)