1960年代から始まった村田新蔵(しんぞう)氏(1930-2008)と洋子(ようこ)氏(1931- )の西洋工芸を中心とする蒐集活動。そのコレクションは主に13世紀から19世紀までの民衆が用いた陶器、ガラス、金工、木工などで形成されています。
全体の核をなす陶器は、日本で人気を博すスリップウェアなどの英国古陶、イスラムの影響が顕著なラスター彩などのスペイン陶器、そしてライン炻器(せっき)として知られるドイツの水注類、生き生きとした絵付けやプリミティブな姿形が目を引くオランダの焼物、その他ヨーロッパ各地の器物で占められています。ガラス部門ではレーマー杯などの森林ガラスやエナメルで彩られた愛らしい文様の瓶などがあり、見逃すことができません。金工品は鍛冶職人の手による暖炉周辺の道具、ナイフや鋏など身辺の品々、ピューターによる皿や注器類が魅力的です。特筆すべきは、豊富な意匠を誇る鍵と錠のまとまった蒐集品が含まれていることでしょう。くわえて、生活道具として製作された各種の木工品を蔵し、中でも近年関心が高まっているウィンザーチェアやラッシュ張りの椅子類は、多くの優品を有しています。
今展は2022年秋に洋子氏と長女・和田安理子(あんりこ)氏から受けた、800点を越える村田コレクションの寄贈を記念して開催するものです。新藏、洋子両氏が生涯をかけて蒐めた西洋工芸の精華、その中からさらに厳選した約300点の優品によって、西洋工芸の美を広く紹介します。