やさしい日本語とは、普通の日本語よりも簡単で、外国人などの日本語を第一言語としない人にも分かりやすい日本語のことです。1995年の阪神淡路大震災で、日本語も英語も十分にわからず必要な情報を受け取ることのできなかった人がいたことから考え出されたことばで、世界的なパンデミックの発生に際しても今や多くの自治体が「やさしい日本語」で情報発信をしています。
緊急時の外国人のために考えられた「やさしい日本語」ですが、今日ではそのマインドは生活情報や観光の場面にも用いられており、文学の翻訳など、日本語文化の入り口としての可能性も考えられるようになってきました。外国人以外にも、子供や聴覚障害者も含めたより多くの人にとって、より的確に意味を伝えられるような、「易しい」だけでなく「優しい」日本語が模索されています。
美術館は、絵画や彫刻といった視覚芸術を扱う場所だからこそ、視覚的イメージから受ける印象や、感じたことを表現する新しい言葉と出会う場所です。しかし、美術館を取り巻く言葉は、得てしてやさしくないときがあるかもしれません。多様な人が集まる美術館の中で、細かなニュアンスを伝えるための専門用語や、公共空間としての配慮を見つめ直すと、どんな発見があるでしょうか。
本展では、北海学園大学人文学部日本文化学科との共同で、「やさしい日本語」を通して、美術館の「やさしい」を考えます。