森山大道(1938-)は、写真家として今や世界の頂点に立った。2012-2013年、ウィリアム・クラインとの二人展をロンドンのテート・モダンで開催し、2018年にはフランス芸術文化勲章シュヴァリエを授与され、翌年写真のノーベル賞といわれるハッセルブラッド財団国際写真賞を受賞している。
森山は、すでに少年期から旺盛な表現力を携えていた。写真の道に進んで以来60年間、その並外れた表出力は一貫している。一方、それぞれの時代に変容を遂げながら、豊かに展開してきたといえる。この展覧会では、その森山の写真そのものを真正面から捉えていきたい。活動や評価とは切り離し、写真全体を3つの大きなうねりのなかでみていく。
まず、「写真とは何か」という問いを鮮烈につきつけ、「写真」という存在に躰ごとぶつかっていった1960年代末から1970年代初頭。次に、「写真は光と時間の化石である」という写真の原点に立ち戻っていく1970年代後半から1980年代。そして、解き放たれたように世界中の街を闊歩していく1990年代以降である。森山の眼差しが射た写真には、記憶が幾重にも重なる。漆黒の闇から照射される光に満ちた生命体のような写真群。圧倒的な強靱さをもつ写真を発表し続けた森山の60年を凝縮する。
さらに、「DAIDO ALBUM」(展示室5)では、幼少期、「PROVOKE」、「WORKSHOP写真学校」、「room・801」、数々の国際展などの様々な活動を、作品と資料によって顕彰していく。日本初の回顧展「光の狩人 森山大道1965-2003」(2003年、島根県立美術館ほか)以降20年の活動も含めて、作品約400点、資料約200点で構成する。