植田正治の作品には、子どもたちの姿をとらえた作品がたくさんあります。公園、学校、グラウンド、川の土手、田んぼ、野原など、みなれているはずなのになぜかふと立ち止まってしまいたくなるような風景の中に、子どもたちはたたずんでいます。小さいながらも確かな存在であり、それでいてふわっと消えてしまいそうな不可思議な存在である子どもたちの姿は、植田の写真のなかで特別な輝きを放っています。
みんなで笑いながら学校から帰る光景、七夕の日に浴衣を着て並ぶ子どもたち。自由に野原や草むらを走りまわり、のびのびとした表情をみせながらも、カメラを向けられたときにみせるどこか照れくさそうにはにかむ仕草には、私たちにやすらぎを与えてくれる魅力があります。また、写真のなかの子どもたちの無垢で純粋なまなざしは、忘れかけていた大切な瞬間(とき)を思い出させてくれたり、子どもの頃の記憶を喚起するかのように私たちの心に強く響いてきます。
今回の展覧会では、「子ども」をモティーフとした写真の数々を「絵日記」「夏休み」「学校」の3つのキーワードでまとめ、夏に限らずそれぞれの季節で輝く子どもたちの姿を植田のまなざしを通してご覧いただきます。