「能」は加賀藩より続く、金沢の伝統文化のひとつです。中でも宝生流の能が盛んであったことから「加賀宝生」と称されます。しかし、その繁栄の象徴ともいえる加賀藩前田家所蔵の能装束は、明治期の混乱と大正昭和期の売立等によりほとんど散逸してしまいました。
近年になって、かつて前田家が所蔵した能装束が相次いで確認され、その質と量に改めて注目が集まっています。特に、能装束を包む畳紙に、仕立てた年代やその経緯が記されたものがあることから、12代斉広・13代斉泰の時代に、多くの能装束が仕立てられたことが判明したのです。
本展覧会は、各地に散逸した前田家伝来の能装束を一堂に集め、多彩で華やかな能装束の展示をとおして、「加賀宝生」の栄華を再現するとともに、能面と能楽資料もあわせて紹介し、地方において独自の展開を遂げた加賀藩の能楽史を再考するものです。
令和4年は石川県立能楽堂開館50周年にあたります。本展覧会で紹介する約80点の作品によって、能に関心を持ち、より理解を深め、能楽堂へ足を運ぶきっかけになることを目指しています。