いわさきちひろが22年間を過ごした練馬区下石神井の自宅の跡地に建つ、ちひろ美術館・東京。ここには、多くの絵が生まれ、日々のくらしが営まれたアトリエの、1972年当時のようすが再現されています。画机や本棚などの愛用の品々が遺されたアトリエからは、50年を経た今も、ちひろの人物像を偲ぶことができます。
ちひろは戦争のなかで一度は夢を見失いながらも、戦後、懸命に絵を描いて、子どもの本の画家としての道を拓きました。また、愛する人と家庭を築いたちひろにとって、家族とのくらしもかけがえのないものでした。本展では、くらしと仕事の両方を大切にしながら自分の人生を切り拓いたちひろの生き方を、アトリエを軸にたどります。画家としての出発点となった神田の下宿、家族とともにくらした練馬の自宅、信州の黒姫高原に建てた黒姫山荘―それぞれのアトリエで描かれた作品のほか、ちひろ自身のことば、身近な人の証言、写真や資料なども紹介します。