「つくること」と「のこすこと」を区別しないアーティストによる想像力で生成された世界では、明日の日記が記され、地図なき場所が創出される。
記録写真の対象が変幻し、全ては夢だったと気が付いて異世界に行くこともある。このような過去と未来、記憶と妄想、現実と虚構を共に引き寄せる収集作業によって、異なる領域の物語や時代の間で新たな出会いが促される。「ものののこしかた」とは、そのための方法に他ならない。
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福島県会津地方で教員・郷土史家として活動し、失われつつある地域の記憶を数多くの絵画や版画に描き残した古川利意(ふるかわとしい)(1924-2020)。古川氏の作品を収蔵する記念美術館設立への取り組みを起点に、本展では、「ものののこしかた」≒「アーカイヴ」について考察していきます。各作家たちは、異なる時間や領域、現実と虚構の間を行き来し、そこで紡ぎ出される様々な物語と向き合いながら、想像力とともに成る「のこすこと」の多様なあり方と、その可能性を提示します。