滋賀県甲賀市にある福祉施設「やまなみ工房」では現在90名の方が通い、独自の方法で表現活動を行っています。彼らの制作スタイルは、一人一人異なります。寝転がったり、歌を歌ったり、自分自身をほめながら、自由に生み出される、新しくそしてどこか懐かしい世界。表現は人それぞれですが、「自分の愛する世界を求めていく」姿勢は共通しています。
美術の指導者をもたず、工房のスタッフのサポートを受けながら日々思うままに制作し続ける彼らの作品が、いま国内外で多くの人の心をとらえ、大きな注目を集めています。
それは、やまなみ工房の「社会の賞賛や評価を気にすることなく、自分の愛する世界をひたすら築くことである」というモットーが、社会的な規範や常識を飛び越える手助けをしながら、作品の受け手である私たちにも、かけがえのないものを届けてくれるからに他なりません。
本展覧会では、やまなみ工房に通う人たち37名の作品約200点とともに、作品を作る人と、それを支えるスタッフの活動をパネルや映像で紹介することで、工房の魅力をまるごとご覧いただきます。アートとは何か、生きるとは何か、過去から続く大きな問いへのヒントが詰まった展覧会です。