孤高の画家が描く、清澄な京洛の四季
三重県松阪市に生まれ、京都画壇を代表する日本画家として活躍した宇田荻邨(てきそん)(一八九六-一九八〇)。長い歴史と伝統をもつ京都を見つめ、生涯変わることなく京洛の四季を描きました。流麗な線描と明るく爽やかな色彩で描き出される格調高い荻邨の京洛風景は、今もなお、人々を魅了してやみません。
松阪第一尋常高等学校(現・松阪市立第一小学校)時代から非凡な才能を示していた荻邨は、伊勢の画家・中村左洲(さしゅう)に手ほどきを受けた後、一九一三(大正二)年に十七歳で上洛。京都画壇の菊池芳文(ほうぶん)、芳文没後はその養子である契月(けいげつ)に師事して研鑽を積み、近代の日本画界に確固たる地位を築きました。
今回の展覧会では、初期から晩年の代表作に大下絵、写生帖、さらには故郷・松阪との繋がりを示す作品を加えて展観し、六十五年に及ぶ荻邨の画業をご紹介します。およそ四十年ぶりとなる大規模な回顧展にどうぞご期待ください。