浮世絵には豊かな色彩があふれています。なかでも「赤」は、作品全体を華やかにしたり、画面を引き締めたりする、最も重要な色です。春信や写楽の時代では淡いものでしたが、幕末の広重や国貞の時代になると濃さを増し、芳年が活躍した明治にはどぎつくなっていきました。200年以上に渡る浮世絵の歴史の中で、その色合いを少しずつ変化させているのです。さらに、「紅絵」、「紅摺絵」、「赤絵」、「紅嫌い」など、浮世絵の制作用語として最も用いられる色でもありました。赤の絵具の使われた方が、浮世絵の歴史を物語っていると言えるでしょう。
本展覧会は、人気の浮世絵師たちによる、鮮やかな赤色が印象的な浮世絵・約60点を厳選しました。江戸・明治の人々を魅了した赤の美しさの秘密に迫ります。