関口俊吾は、明治44(1911)年1月1日に神戸市熊内町に誕生し、令和3(2021)年に生誕110年を迎えた神戸市出身の画家です。10歳の年に須磨の離宮前町に転居し、このころ流行していたクレヨンで直接対象を写生したことで、絵を描くことの楽しさに目覚めます。その後、京都日仏学館のアカデミー鹿子木で鹿子木孟郎(かのこぎたけしろう)に師事し、24歳でフランス国政府の招聘留学生として渡仏、翌年、パリ国立高等美術学校に入学してヨーロッパのアカデミックな技法を修得しました。
第二次世界大戦中は日本に帰国し、小磯良平らが創立した新制作派協会に参加します。東京国立近代美術館における初めての大規模な外国人作家の個展(「ビュッフェ-その芸術の全貌」)の開催を斡旋、また、インドシナの画家たちの案内役をつとめ、神戸市とマルセイユ市が姉妹都市提携を結ぶにあたり尽力するなど、日本と外国の交流にも携わりました。昭和26(1951)年に再渡仏してからは、パリのアトリエを拠点として約半世紀にわたり制作を続けていましたが、平成14(2002)年に91歳でなくなります。
関口俊吾の社交的な人柄を思わせるような、明るい色彩と抒情的であたたかい作風は、詩人フランシス・ポンジュをはじめとしてフランスの人々にも高く評価されました。関口の作品に息づく、喜び、悲しみ、そして楽しみといった、人間の営みを感じさせる親密な世界を味わっていただければと考えます。油彩21点、水彩および素描33点、計54点を紹介します。