日本民藝館の創設者で、美学者としても知られる柳宗悦(1889-1961)は、造形物に美が宿る原理を仏教思想に求めました。特に浄土思想は柳の思想形成に大きな影響を及ぼし、晩年の1955年には柳著作の最高傑作とも評される『南無阿弥陀仏』を上梓しています。本展は来迎図を始めとする浄土信仰に関連した絵画を中心に、これまでまとめて紹介されることがなかった鎌倉~室町時代の着色の仏教絵画をご覧いただく、貴重な機会となります。
柳による中世の着色仏画のコレクションは、ほとんどが戦後の蒐集ですが、『南無阿弥陀仏』の刊行後に大病で左半身の自由を失ってしまった後、1958年から61年に没するまでの間に、特に集中的に集められています。そのためか、本展で取り上げる着色仏画について柳は多くを書き残していませんが、恐らくはこれらのコレクションを礎に、より一層踏み込んだ仏教美学の構築を目指して、世に問う意があったように思われてなりません。