川辺の一日 川はいつも近くを流れていた/彼らは静かな流れのことを話していた/草の茂みがほのかに波打った/ずっと水の流れる音がしている/「よし、帰りは森をぬけていこう」/さっきからずっとそのことを考えているんだ/ちいさな男の子は川の流れにのっていくことにした/誰もいない、きもちのいい午後だった/「自分のことばっかしでさ、こっちの話なんか興味がないんだよ、きっと」/花びらが水面のきらめきのなかに消えていくのを見ていた/「ミヤマカラスアゲハはつかまえたことがあるよ。子供の頃だけど」/そのとき水面すれすれを風がわたっていった