中川哲哉(1897-1976)は天童市北目出身の漆工芸家です。若くして塗師(漆器などに漆を塗る職人)になることを目指し、仙台、東京、京都、そしてまた東京で修業をしました。技術を磨くだけでなく、各地の博物館に足しげく通い、完成された漆器の研究も怠りませんでした。中川が研鑽を重ねていた当時、漆器は素地(器の原型)に漆を塗り、蒔絵や螺鈿などの装飾を施して完成しました。髹漆(きゅうしつ)とは「器物に漆を塗ること。また、その塗り物」を示し、髹漆家とは漆の塗師を表しています。中川は塗りの仕事だけで漆器を完成することができる「乾漆」技法に注目し、すでに廃れてしまった乾漆技法(木心乾漆)の復元に成功します。そして、中川は日展、伝統工芸展などをはじめ、海外で開催された展覧会にも出品し、国内外で高い評価を得ました。
本展は中川哲哉のご遺族から作品寄贈を受けたことを記念して開催します。寄贈を受けた作品に合わせ近隣の美術館・博物館、個人が所蔵する作品を合わせ68点の作品を公開します。中川の塗りと乾漆の技術をご堪能ください。