五十歳のときに最初の絵本『かさじぞう』を墨絵で描き、日本の絵画に新風を吹き込んだ赤羽末吉。若いころからほぼ独学で日本画の修練を積んできた赤羽は、それぞれの絵本の主題にふさわしい絵画表現を求めて、日本の伝統的な美術を研究し、独自の解釈で絵本に取り入れています。壮大な歴史物語である『源平絵巻物語』や『日本の神話』は華麗な大和絵風の絵で、昔話『したきりすずめ』は簡素な丹緑本風に、自作のナンセンス絵本『おへそがえる・ごん』は絵巻「鳥獣戯画」に学んで、一作ごとにバリエーションに富んだ画風を展開しました。
一九八〇年に日本で最初に国際アンデルセン賞画家賞を受賞した赤羽は、「日本の古い伝統的な美術の美しさに現代的な解釈を加えたものを、次の世代の子どもに伝えたい」と授賞式で語りました。本展では、赤羽末吉の絵画表現に着目し、子どもたちに開かれた日本美術のとびらともいえる絵本を紹介します。