丸木俊(まるき とし、1912-2000)は、夫の丸木位里(まるき いり、1901-1995)との共同制作《原爆の図》で世界的に知られますが、そうした画業と並行して、150冊を超える絵本や挿絵、装幀の仕事を残しています。昭和17年『ヤシノミノタビ』などの異国の風物を伝える絵本制作をはじまりに、太平洋戦争後はヨーロッパやロシアの童話や物語の挿絵にいち早く取り組み、その後日本の民話や伝説の挿絵、創作絵本、そして原爆や水俣病、沖縄戦の記録絵本と、幅広いジャンルを手がけました。繊細な描線、鮮やかな色彩で描かれる人間愛あふれる物語世界は、1971年にブラティスラヴァ国際絵本原画展(スロバキア)で金のりんご賞を受賞するなど、国内外で高い評価を受けました。
本展では、國學院大學栃木学園参考館が所蔵する貴重な原画のなかから、選りすぐりの81点を紹介いたします。俊が描いたイマジネーションあふれる物語世界を楽しみ、原画ならではの画家の息吹きを感じていただけるまたとない機会です。お子さんや子育て中のおとな、児童教育に携わる多くの方にご覧いただけたら幸いです。