見えないものを信じることは、生き抜くための智恵でもある。
その智恵を、人が手で「もの」を作ってきた歴史を辿り採集することと、
現代を生きる智恵として新たに「もの」をつくることの両輪を
以って、私自身の制作とする。
針と糸によって作られるものには、目には見えないものへの
信仰心が宿っているように思う。その祈りは、たくさんの人には共有されにくい。
しかしある土地の、ある時間の中では必然の行為なのだ、まぎれもなく。
それは時に、人が生き抜くための祝祭となる。
2020年から制作し始めた本作は、私自身或いは、遠いどこかの誰かの物語。
未曾有の時代の中にいる私たちにとっての針と糸の物語なのである。