タイトル等
Ceramic Proposition
陶芸の提案2021
-間近に観る-
石井 美緒・石山 哲央・一色 智登世・川瀬 理央・木野 智史・下村 一真・田中 野穂・田中 悠・谷内 薫・中島 綾香・西 崇・三島 寛也・森川 彩夏
会場
ギャラリー白 ギャラリー白3 ギャラリー白kuro
会期
2021-04-12~2021-04-24
休催日
日曜日休廊
開催時間
11:00a.m.~7:00 p.m.
(土曜日 5:00p.m.迄)
概要
「間近に見る」
奥村泰彦
経験がないわけではなく、予期されていなかったわけでもない。むしろ何度もの同様の経験から様々な知見が蓄積され、それ相応の準備もなされていたにとどまらず、物語という形でも様々な想定がなされていた事態であるにもかかわらず、実際に自分たちがその立たされるとどのような対応を取るのが正しいのかわからない。新型コロナウイルスの感染拡大をめぐって、少なくとも自分が置かれたここ一年あまりの状況はそういったところではないかと、我が事であっても断言できない気分てあることの方が、実際に起こっている事態より精神衛生に悪いようにも思う。全部予想していた通りであるような、全く予想外のことばかりのような、その両方が同時に起こっているというか、予想していたことではあるが、今ここでこういう形で起こるとは想像していなかった、そのズレが心身に好ましいとは言えない状態を生じせしめているような気もする。
インターネットを介して複数の遠隔地間でコミュニケーションを取り合うなど、技術自体はこのような事態に対処するために開発されていたのてはないのかと思えるほどで、実際のところ、技術的には可能であるのに理解を得られずに普及していなかったことが、必要に迫られる形で実現したり、せざるを得なかったりということも起こっている。
インターネットを介した情報流通の拡大は、感染症の拡大とは関係なく、それ以前から始まっていたことである。多くの情報がやりとりされる中にはもちろん、芸術に関するものも少なからず含まれている。ネットを通じて参照することのできる文献や資料などの公開も進み、博物館や図書館の世界(Museums、Libraries、Archivesの頭文字からMLAと呼ばれたりする)では「アーカイブ」という言葉がちょっとした流行語のようになったりもしている。調べ物をしていると、作家のメモのような原資料が画像となって公開されていることも増え、便利なことは間違いない。
名画とされる古典的な作品のなかには高精細画像が公開されているものもあり、顕微鏡とまではいかなくても、虫眼鏡ぐらいの精度で作品の表面をなめるように見ていくこともできる。作者の細かな筆の動きをたどって、拡大された画像の中で迷子になっていく体験は、それはそれで幸せなものだ。そこまで接近して作品の表面の細部を観察することは、実際に作品の前に立って、拡大鏡などを使っても、体験することは難しい。多くの人が精細な画像を隅々まで見られるようになったことで、新たに発見されるものごともあるだろう。詳細に記録された画像を仔細に見る体験は、しかし間近に見ることとは異なっているように感じられる。
間近で撮影された詳細な画像を眺めることと、実際に間近で見ることの間に横たわる懸隔はなにゆえに生じるのだろうか。そしてその懸隔はどのようなものとして説明されるだろうか。というとその説明は難しい。
思い浮かぶ理由の一つとしては、いかに精細であろうとも、二つの眼ではなく、単眼のレンズで捉えられた映像は、立体的なボケやズレを孕んでおらず、単調であるからではないかということがある。もう一つには、映像を眺めることによって、実物を前にして湧き上がる視覚以外の感覚、特に触覚が実物の質感から隔てられていることで、身体的な感覚が働かないのではないか。もちろん美術鑑賞の場では多くの場合、展示されているものに直接手で触れることは禁止されており、ほとんどの作品の質感を触覚によって確認することはできないのだが、視触覚という言葉もあるように、感覚されることが五感の相互を刺激し、別の感覚へと転移していく作用が生じる。作品を見ることは単に視覚だけに頼るのではなく、体験する場の音や匂い、部屋の広さや温度、床の質感まで含めた感覚を受け容れる体験なのではないだろうか。モニターを通して見る画像は、いかに精度の高いものであっても、つまるところ液晶画面の平滑さに帰着せざるを得ないのである。いずれも特に根拠なく感じているだけで、証明の方法さえ見当がつかない程度の仮説ではある。つまるところインターネットを介して間近に見られる画像を見ているのは、自分ではなくカメラなのだということだろう。
ところで、予想されているにもかかわらず予想外の事態が起こるといえば、展覧会での作品との出会いとは、まさにそのようなものではないか。今回の「陶芸の提案」展には13名の作家が参加する予定とのことだが、新たに加わったのは1名である。それぞれが自分の作風といったものを獲得しながら、それを展開し、拡張し、あるいは打ち破ることを試み、予想されつつ予想外の作品を生み出すことが期待される。想定外の作品との出会いは、精神を疲労させるのではなく、高揚させるのはなぜなのか。間近に作品を見ながら考えてみたい。
(おくむらやすひこ・和歌山県立近代美術館)
会場住所
〒530-0047
大阪府大阪市北区西天満4-3-3 星光ビル2F
交通案内
●JR大阪駅/地下鉄梅田駅より約15分
●京阪/地下鉄淀屋橋駅1番出口より約10分
●地下鉄南森町駅2番出口より約10分
●京阪なにわ橋駅1番出口より約5分
ホームページ
http://galleryhaku.com/
会場問合せ先
06-6363-0493 art@galleryhaku.com
大阪府大阪市北区西天満4-3-3 星光ビル2F
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