近年「ミラーワールド」「デジタルツイン」「コモングラウンド」などの概念がさまざまなシーンで取り上げられるようになっています。これらの言葉はどれも、通信やコンピュータ処理の高速化などを背景に、実空間と対応関係をもつ、高精度なシミュレーションなどにも活用可能なデジタル情報空間が実現化しつつあることを象徴しています。さらに2020年に起こった新型コロナウイルスの世界的な感染拡大は、物理的移動に大きな制限をかけました。その結果、デジタル情報空間への注目度があらためて高まっているといえるでしょう。この新型コロナウイルス禍において、多くの美術館が展覧会を中止または予定を延期しました。そして、中止になってしまった展覧会や、始まったものの観客を迎えることができない展覧会を、オンライン上で公開する試みが始まりました。さらに、アーティストによるオンラインでの展示がさまざまに試行されました。そうした社会変動を経験した私たちには、これまでとは異なる新しい展覧会の活動モデルを想定していくことが必要とされているのではないでしょうか。今回ICCでは、メディア・テクノロジーを駆使し、これまでもネットワーク上での作品公開などを展開してきたメディア・アートの手法によって、新しい展覧会のあり方を示唆するヴィジョンとその可能性を探る試みを行ないます。