様々な思考を表出する現代彫刻は、様式には収まらず、多様な表現によって拡張し続けています。「オムニ彫刻」は、三沢厚彦による造語であり、彫刻の持ちうる全方位性(≒omni)への考えから生まれた言葉です。「オムニ」は現代彫刻の姿や現象を包摂する言葉であり、これからの彫刻を考えるためのキーワードとなるかもしれません。
本展に参加する11名の作家たちは、世代もさることながら、彫刻への考え方や向き合い方も各人各様であり、木、鉄、石、FRPなど扱う素材や技法も多岐にわたります。それぞれの彫刻は固有のベクトルや解釈可能性を持ち合わせており、まさに現代彫刻の全方位性を体現するかのような彫刻家が集まったといえます。
一方で、彫刻は自律的であると同時に、実体として定立するためには場所性と不可分であり、周囲の環境との関係性が重要な要素です。本展会場は、建築家の芦原義信が1967年に設計した、ブルータリズムの影響を受けたモダニズム建築であり、その後さらに異なる建築思考による二度の改修を経て、特有の空間となっています。本展では、画家の杉戸洋が展示構成に関わり、触媒となることで、11名による彫刻にこれまでにない関係性、あるいは共生性を誘発します。そして作品と空間が呼応、あるいは反発し合い、展示空間全体もまた一つの表現性を有する場となる時、そこには新たな彫刻の姿が立ち現れるでしょう。
「オムニ彫刻」という一つの概念をめぐり試みる本展をとおして、11作家の作品がいかにして彫刻となるのか―この場所から、彫刻の現在とこれから、その可能性を探ります。