当館にはどのような美術作家の作品が収集されているか、ご存知でしょうか。「美術家大辞典」は、美術部門のコレクションに含まれる作品の作者を、辞典の形式に倣った五十音順にて、すべてご紹介しようという新しい試みです。各作家の活動時期によって近世以前と近現代とに区分し、昨年度より「あ行」の名前を持つ美術作家から順に二部屋にて展開しており、二年目を迎える今年度で当面は完結する予定です。〈近現代編〉の本会場では、「ま行以降」の美術家のうち、主として明治期以降に作品を制作してきた作家から、私達と同時代を共有しているアーティストまでを対象として、当館の収蔵作品をご覧いただきます。
本展では、会場に並ぶ作品の作者は五十音順―つまり無作為に選ばれています。それゆえ、通常の展覧会で意図されているところのテーマ性は見当たらず、一見すると散漫な印象を抱くかもしれません。しかしひとたび会場に足を踏み入れると、前田寛治や増田英一ら一九二〇年に結成された「砂丘社」を牽引したメンバー、あるいは八百谷冷泉や前田直衛といった郷土出身の力量豊かな日本画家など、鳥取県の芸術文化活動を支える美術家たちによる活動の連関を見いだすことができます。それは、郷土にゆかりのある作家や作品、またそれらに関連する美術を柱として、当館が継続的に収集してきた経緯を如実に反映するものです。
偶然めくった辞典の一ページに思いがけない発見があるように、本会場でも美術家の偶然の邂逅を通じて見えてくるであろう「鳥取の美術史」の一端をぜひ探してみてください。