身のまわりに生い茂る、草、花、樹木は、私たちの心をほっとさせ、いやしてくれる不思議な「ちから」をそなえています。絵画においても、古来、重要なモティーフとして、繰り返し表現されてきました。
画家は、草花や樹木の姿を描くことを通じて、自然に敬意をあらわし、自然の神秘的なエネルギーに迫ろうとします。「植物図譜」は科学的に正確な描写を追及する絵画ですが、卓抜した描き手を得るとき、単なる再現を超え、生あるものとしての重厚な存在感をたたえた表現が切り開かれます。自然科学の資料として扱われる植物の化石もまた、「時間」というプレス機によって刻印された「版画」だと考えるとき、地球が生み出す「アート」だということができるかもしれません。植物自体を版としたり、植物採集の記録を版画とするなど、現代版画の分野においても、植物の「ちから」が多様に表現されています。本展は、当館がとりくむ重要なテーマのひとつである「自然と芸術」に係る企画展です。日本画、油彩、水彩、版画、写真、化石など約200点により、圧倒的存在感を放つ花樹草木の世界をご堪能ください。