荒木優光は、音の体験やフィールドワークを起点に、独自の音場空間を構築しています。シアターピースやインスタレーションとして作品を発表するほか、記録にまつわる作業集団ARCHIVES PAY(アーカイブスペイ)や音楽グループNEW MANUKE(ニューマヌケ)のメンバーとしても活動。「音を作ることは、音を聞くことから始まる」と荒木が言うように、一貫して、音を作る行為そのものよりも、聞く環境の創造性に重きが置かれています。本展においても「聞く場を作る」ことを主軸に、当館の建築的特徴を生かした、音の再生装置としての空間が創出されます。録音された音そのものの響き、音が再生されるギャラリー内で発生する残響、鑑賞者の身体的移動による音の変化は、共鳴と反響の無数のレイヤーを生み出し、実体を持たない音の存在が立ち現れます。