人を描くといっても、その目的―作品をとおして伝えようとするもの―によって表現方法はさまざまです。
例えば、肖像画は像主(描かれた人)の人となりや功績を後世に伝えようとするもので、時に写実的であるより理想化された姿を描くこともあります。
また、美人画は人物の容姿や内面の美しさを切り取り、永遠の美として表現しているともいえます。
一方、江戸時代後期の浮世絵に見られる役者絵や相撲絵等は当時人気を博していた歌舞伎役者や力士のブロマイド的なものとして制作されたものといえるでしょう。
その他、社会風俗や何気ない日常を象徴するものとして個人だけでなく集団、あるいは点景として人物が描かれる場合もあります。現代日本を代表する画家として活躍した高山辰雄は人物を描くとき、その美しさ、特徴だけでなく、複雑な感情、人物の過ごした時間など、さまざまな要素を織り込み、深い精神性を湛えた存在として表現しました。
今回は近現代を中心とした日本画・版画による人物画を紹介します。作家それぞれが人物への思いを込めた魅力あふれる作品の数々をご覧ください。