木村翔馬は、筆や絵具、キャンバスを用いた従来の絵画とともに、その絵画的ルールを取り入れた3DCG(3次元コンピュータグラフィックス)、VR(バーチャルリアリティ)による作品を制作しています。デジタル技術は、作家にとって浮遊する線や色面といった新たな表現の可能性を開きますが、一方で、これまでにない感覚ももたらしました。それは水中での動きづらさに近いもので、このもどかしさを「水中スペック」と表現し、本展のタイトルとしています。
デジタルとアナログが重なり合う現代には、このような時代特有の身体的、視覚的感覚が生じます。それは画家自身にどのような影響を及ぼしているのか
―木村が探るのは、この変化にともなう絵画の在り方と言えます。
最新作を含む本展は、2次元のキャンバスと3次元のVR、その中間ともいえる透明なガラス窓(ザ・トライアングルの地上部分)を支持体とする作品で構成されます。
3つの異なる空間を舞台とする作品は、相互に関係し合いながら、それぞれ鑑賞者に新たな絵画世界を垣間見せてくれることでしょう。線や色面に刻まれる木村の動きや色彩感覚にも着目しながらご鑑賞ください。