備前焼に花を入れた事例が茶会記に初出するのは『天王寺屋会記』永禄10(1567)年12月24日の条と考察されています。釉を使用しない素朴なやきものである備前焼の価値は、この頃既に認められていたようです。16世紀後半には人気の茶道具として不動の格を築く備前焼の花入ですが、最古級の伝世資料は永正9(1512)年の紀年銘を持つ、岡山県指定重要文化財(工芸品)の静円寺永正銘備前焼花瓶です。銘文には製作年などのほか、山号が記されています。つまり、広義に解釈すると備前焼花入の生産・流通・重用の原初は、仏への「祈り」を具現化する寺院の仏花瓶にあるとも指摘できるのです。
本展では、16・17世紀に生産された岡山県・備前市指定の文化財を含む紀年銘備前焼花瓶の寄進事例をもとに当時の歴史の一端をご紹介します。あわせて古備前花入もご鑑賞ください。約30点の出品資料、関連行事の開催によって、備前焼及び日本文化がさらに振興されていくことを願います。