このたびの展覧会では、令和元年度に新しく収蔵した資料をご紹介いたします。
本年度は天正・文禄年間(1580~1590年代)と推定される紀銘入りの大甕、針葉樹の葉や波状文を施した貴重な壷などの古備前、そして人間国宝・金重陶陽の作品を含めた12点からなる「上田コレクション」をはじめ、今年2月に完成した備前市役所新庁舎レリーフの原案(ドローイング)、現代作家作品がコレクションに加わりました。
そのなかでも古備前の大甕は、備前焼の歴史が大きく変遷する時代を語るうえでは欠かせない貴重な資料です。
備前焼の二石入、三石入などの大甕は室町時代の終わり頃から桃山時代のごく僅かな期間(約60~70年間)を中心に生産されました。この背景には現代に通じる日本人の暮らしの特質が萌芽し、広く生活に根ざしていった文化の発展がありました。2020年の今、現代の眼で大甕の持つ「大きく、堅牢」という特徴を見ると非効率に思うこともあるでしょう。
しかし、これらの資料が生産された当時に想いを馳せると経済や商業、ひいては日々の暮らしをいかに効率良く過ごさんとした人々の姿が見えてくるのです。
展覧会では、新たに公開展示を開始した古備前も合わせてお楽しみください。
備前焼が一貫するその「特質」のなかから、古備前のすばらしさや魅力を感じていただくと共に、近代から現代、そして令和の時代に息付く作品にも存在する「革新の積み重ね=伝統」に注目してくだされば幸いです。