このたび、奈良県立万葉文化館では、特別展「万葉の起憶―偉人たちがしたためた万葉歌碑原書を中心に―」を開催いたします。
万葉文化館所蔵の「万葉日本画」一五四点は、平成十三年の開館にあたって当時の日本画壇を代表する日本画家が『万葉集』の歌を題材に制作したもので『万葉集』の世界を視覚的な面から楽しむことのできる美術作品となっています。
本展覧会では「万葉日本画」とともに、桜井市所蔵の万葉歌碑原書を展示します。
「山の辺の道」や「伊勢街道」、「磐余の道」など多くの古道が残る桜井市。それら古道の路傍には記紀万葉の歌碑が六四基建立されています。昭和四七年(一九七二)から始まった歌稗の建立に当たっては、桜井市出身で文芸評論家の保田與重郎(一九一〇-一九八一)の呼びかけにより、昭和を代表する作家、文学者、画家、学者など各界の著名人から揮毫が寄せられました。今回は、それら揮毫の原書のうち二八点を展示いたします。昭和の文人たちの躍動感あふれる書と、画家が『万葉集』を丹念に読み込んで描いた「万葉日本画」をあわせてご覧いただくことで、大和の風土に託された古代の人々の想いに触れ、『万葉集』の世界を楽しんでいただければ幸いです。