夏休みをはさむ8月は、アニアス・ワイルダーの映像とマケットスケールの作品による展示をお届けします。
アニアス・ワイルダーは、一定の長さの木片を積み上げ、重力と木片との間に働く微妙なバランスのみで自立する構造物を巨大なスケールで制作するアーティストです。球体、鳥かごや釣り鐘のようなドーム、ゆるやかにウェーブする塔など、木片の規則的なリズムで生み出される造形は、静寂なる緊張と温かさが同居する独特の構造美が魅力です。
インスタレーションとして発表される作品の多くは、釘や接着剤が一切使われずに、長い時間と神経を費やして積み上げられていきます。当ギャラリーで行った3回の展覧会(2005年/2008年/2018年)では、空間を凌駕するダイナミズムと、それとは裏腹にフラジャイルな作品構造を活かし、かつ自然の力という偶然も加わりながら、それぞれにユニークなドラマを築いてきました。
今回のウィンドウ・ギャラリーでは、大型作品を手掛けるときに必ず制作される1/10マケットスケールの作品のほか、映像では、生き物のように木材をダンスさせるキネティックインスタレーションや、木片で球体を作り上げていくタイムラプス、作品制作の様子からキッキングによって作品を瞬時に崩壊させてしまうパフォーマンスをおさめた2005年の展覧会「経験論」の記録(DVD収録より)などをご紹介します。
アニアス・ワイルダーは木片(古材の木片も多く用いられます)に新たな組成の可能性を与え、組成→自立→還元という一連の出来事を経験化することで、その作品から本質的な循環現象を提示し続けています。改めてアニアス・ワイルダーの世界観を“楽しく”学びながら、これからのニューノーマルな世界を見据えてリスタートしていく経験を皆様と共に重ねていければと思います。
*ACG Window Galleryは、ギャラリー中庭の屋外スペースからご覧いただく展示です。今年5月より、不定期でさまざまな展示を行っております。
なお、現在オフィスは通常どおりですが、ギャラリーは新型コロナウィルス感染拡大防止のため、いましばらく入場をご遠慮いただいております。何卒ご理解を賜りたく、ご了承ください。
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