江戸時代に現在の佐賀県で磁器が初めて作られて以降、この地が日本の磁器生産の中心となります。その中でも明確な目的と用途のもとに作られた磁器が鍋島焼で、当館の焼物コレクションの中核をなしています。昨年、新たに2点の鍋島焼がコレクションに加わりました。本展ではこの2点の作品を皆様にお披露目するするとともに、当館の鍋島焼を丸ごと全て、「マルっと」展示し、丸い皿の中に広がる無限の世界を存分にご堪能いただきます。
鍋島焼は、鍋島藩が将軍家への献上や大名間の贈答を目的とした、いわば官窯の高級磁器の一群です。皿などの食器を中心とし、尺皿とも呼ばれる直径約30㎝の大皿は一枚もので、7寸(約21㎝)、5寸(約15㎝)などの大きさのものは組皿として作られました。本展では大樹が力強く描かれた「染付大樹文大皿」(新収蔵作品)及び大皿の名品「色絵宝尽文大皿」など3点の大皿をはじめ、細密な連続模様が見事な「色絵蜀江文五寸皿」、皿の中央が白く抜けたデザインが印象的な「色絵唐草文七寸皿」や、中国の人物をモチーフにした、ユニークかつ類例が少ない図柄の「染付唐人物文七寸皿」(新収蔵作品)などの作品を一堂に展示し、鍋島焼の特質と魅力にせまります。
また、岡山後楽園延養亭復元60周年記念事業協力展示として、鍋島焼にもみられる伝統意匠が用いられた岡山藩主池田家伝来の能装束をご覧いただく「藩主も愛した伝統意匠」を同時開催いたします。
細密な文様から吉祥文、四季の草花や何気ない日常使いの物をモチーフとした意匠で彩った鍋島焼。これほどまとまったコレクションは、国内でも多くはありません。充実したコレクションと更に加わった2点の鍋島焼、さらに岡山藩主が愛した能装束をご覧いただき、豊かな江戸時代のデザインと、これを用いた人々の生活に思いをはせてみてはいかがでしょう。