このたび、やかげ郷土美術館開館三〇周年を記念し、「旧中塊堂とゆかりの書家展」を開催いたします。
昭和を代表する書家・田中塊堂は、明治二九年岡山県矢掛町に生まれ、大阪に出て川谷尚亭に師事し、書の研鑽を積みました。大正一五年、千草会を創立し、大阪古筆研究会を主宰します。
その後、読んで味わうのではなく、観て感覚に訴える「大字のかな書」の先駆者として、後進の指導にあたりながら、写経研究の第一人者、古筆の研究家としても活躍し、書家としては唯一写経に関する学位論文で文学博士となりました。大学教授や日本書芸院理事長、日本書道美術館初代館長などを歴任し、昭和四四年には日本芸術院賞を受賞するなど、日本書壇の発展に多大な貴献をしました。
凛とした品格の中にも、ほのぼのとした匂いと絵が感じられる田中塊堂の書は、その温厚清節な人柄と共に多くの人々に愛されています。
本展では、田中塊堂の代表作約四○点を一堂に展示するとともに、田中塊堂に直接指導を仰いだ書家・山田勝香、古久保秦石、山本雅堂らの書作品も併せて展示いたします。
田中塊堂から現代の書家へ、連綿と続く「大字のかな書」が織りなす書道芸術をお楽しみください。