笠間と益子は山を挟んで隣接する関東有数のやきものの産地であり、江戸時代に信楽の職人によって笠間に伝わった製陶の技術が、明治時代に笠間から益子へ伝わるなど、共通の歴史を持っています。このような深いつながりがありながらも、県を別にすることなどから、両産地共同での取り組みはこれまで少ないものでした。しかし近年、作家同士の交流は盛んになっており、さらに本年度、「かさましこ ~兄弟産地が紡ぐ“焼き物語”~」として笠間市と益子町が共同で日本遺産に認定されるなど、両者の結びつきは深まっています。
茨城県陶芸美術館では、2013年の特集展示「笠間×益子」を皮切りに、両産地の現代作家を紹介してきました。2018年の「欲しいがみつかるうつわ展 笠間と益子」では、現代のうつわ作家を一望する形で取り上げました。今回の展示では笠間、益子の作家による急須作品に焦点を絞ってご紹介します。
胴、注ぎ口、取っ手など、数多くのパーツからなる急須は、やきものの中でも特に複雑な構造を持ち、日用品でありながら技巧を凝らしたものとなっています。手のひらにすっぽりと収まるその形には愛好者も多く、愛知県の常滑を中心に多くの作品が作られています。日常のうつわ作りの盛んな笠間、益子でも、急須やポットを手がける作家が近年増えています。本展では伝統的な作品から、従来のスタイルにはとらわれない作品まで、さまざまな「急須」作品から、笠間、益子のうつわづくりの今を紹介します。