熊本市現代美術館ギャラリーⅢでは「川野美華展 Nighthawks」を開催します。川野の絵画の特微は、驚異的な想像力から生み出される「異形の生きものたち」と、かれらが紡ぎだす複雑な物語にあります。一見して戸惑いを禁じ得ない、グロテスクで得体のしれない生きものたち。しかし必ずしも凶暴なモンスターというわけではなく、どこか頼りなげで滑稽でもあります。残忍さとコミカルさ、凄烈と鎮静といった、相反する要素が共存する画面は、物事の二面性や世界の複雑さを示唆しているかのようです。
本展は、川野が2010年から描き続けている《夜行性の庭》シリーズを中心に、その代表的作風であるピンクページュを基調とした作品を展示します。温かく柔らかな色調のなかで繰り広げられる生きものたちの物語を、約20点の作品でお楽しみいただきます。また「異形の生きものたち」を肖像画のように扱った小作品も併せてご紹介いたします。
「制作が佳境を迎えるのはいつも深夜」という川野は、「夜」というワードを重視してきました。本展のタイトル"Nighthawks"とは、「夜遊びする人、夜ふかしする人」という意味です。真夜中に、川野と生きものたちが、相談しながら、企みながら、遊びながら創り出した世界に、あなたも迷い込んでみませんか。(岩崎美千子)