私の蝶は銀色に輝くジェット機のイメージよ――。日本のファッションデザイン界のパイオニアである森英恵のこの言葉には、自身の代表的なモチーフである蝶に込められた想いが詰まっています。戦後の復興期にファッションデザイナーとして走り出し、東西の文化を融合させながら世界にはばたく力強い女性として活躍してきた森。1965年にニューヨークで海外初のショー、1977年には東洋人で初めてパリ・オートクチュール組合の会員となり、世界的なファッションデザイナーとしてその名を知られるようになりました。自身の名前を冠したブランドはもちろん、時代とともに第一線を駆け抜けてきた姿は、女性の社会進出の先駆けを象徴する憧れの女性像として人々に愛され続けてきました。本展では森が、半世紀に渡り手がけてきたオートクチュールや映画、舞台の衣裳、ユニフォームなど、多岐にわたる手仕事の作品を通し、激動の時代をしなやかに切り開いてきた彼女の足跡を紹介します。