《東海道五拾三次》は、江戸と上方を結ぶ東海道に設置された53の宿場に江戸・日本橋と終点の京都を含めた55の風景を描いた浮世絵で、歌川広重(1797~1858)の代表作です。江戸時代初期、庶民の旅は禁止されていましたが、病気治療のための湯治旅や伊勢参拝などの信仰の旅は許容される風潮がありました。そして、江戸時代後期になると娯楽としての旅が一般に浸透し、多くの人が旅に出るようになりました。そのような背景の中で1833年~1836年に保永堂から出版された《東海道五拾三次》は、旅ブームが追い風となって爆発的な人気を博します。以降、広重が描く東海道を題材とした浮世絵は20種類以上出版され、一躍名所絵の人気絵師となったのです。
本展覧会では、宿場ごとに保永堂版《東海道五拾三次》とそれから15年後に制作された丸清版《東海道五十三次》、そして大正時代と現在の写真を展示します。保永堂版、丸清版の構図や色、人物の動きの違いを比較していただくとともに、広重の細やかな人物描写や豊かな構成力、彫師、摺師の卓越した技をご覧ください。