岡山の神社を歩くと、ある動物を模した迫力のある陶製の像に出会うことがあります。台座の上で赤褐色製の胴体を筋骨逞しい四肢で支え、時には威嚇するように、時にはやさしい表情で迎えてくれます。備前焼の宮獅子(みやじし)です。
江戸時代、備前焼業界は西日本のマーケット規模が縮小し、新たな商品開発に活路を求めていたといわれています。その新商品として備前焼の獅子は、注文品として大型のものが作られる一方、一般にも様々な大きさのものが多数作られ、明治時代に至るまで業界全体を支えました。製作には土製の型を使い、コストをさげる効率化をはかった様子もうかがえます。注文品の中には、全高が1mを超える巨大なものもあり、備前市西片上の恵比寿宮(えびすぐう)の獅子は1.33mにもなります。現在は、愛知県陶磁美術館の所蔵ですが、特別展にあわせ37年ぶりに備前で展示されます。あわせて瀬戸・美濃の豊かな表情をもつ獅子たちも展観します。
2017年度「きっと恋する六古窯―日本生まれ日本育ちのやきもの産地―」として備前焼が日本遺産の認定を受け、そのストーリーの構成文化財として「備前焼狛犬」も位置づけられています。全高1.5mの宇佐八幡宮(備前市指定)の宮獅子もその代表格ですが、経年劣化のため2017年度から2年かけて修理されました。その様子を復元に使ったスケールダウンモデルや写真パネルで紹介します。
さらに未来に向けて、細工物を手掛ける今の陶工たちが現代に蘇らせるモダンな作品群も紹介します。